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コラム

~時事小窓から垣間見る~ 第二回「平成の企業動向から見る、今の日本」

 

・時価総額ランキングの顔ぶれは大きく変化したものの、時価総額は変わらず!?

・米国市場と異なり日本では時価総額上位に入る新興企業が現れていない

・国内中堅・中小企業では次代の経営者へ経営をバトンタッチできていない

前回の「GDP」に続き、今回は「企業」の切り口で平成の30年間をおおまかに振り返っていきます。

東証一部上場企業の時価総額の変化

 

まずは日本を代表する企業として、東証一部の顔ぶれから見ていきます。図1より、東証一部上場の企業数は平成29年(2017年)度末で2,062社(平成30年9月末時点は2,107社)となり、平成元年(1989年)度末の1,161社から約900社増加しています。上場廃止により市場から退出した企業を考慮すると1,000社以上の企業が新たに東証一部に上場していることになります。

平成30年の間で倍に近い企業が新たに東証一部に上場しているわけですが、その顔ぶれがどのように変化しているのか、時価総額ランキング平成元年(1989年)と平成30年(2018年9月末時点)の上位20社で比較しました。(表1)
(余談ですが、ランキングをパッと見て、ひらがな、カタカナ、アルファベットを使用した企業名が多いですね。)

変化としては、平成元年(1989年)では、金融機関系(銀行、証券、損保)が10社、その他は電力会社、重工系企業、自動車メーカーが占めていました。一方、平成30年(2018年)では金融機関系はたったの4社、その他は各種メーカー・製造業、情報・通信系、更にはファーストリテイリング、任天堂など多岐に渡る産業の企業が名を連ねており、産業トレンドの変化とともに、顔ぶれが変わってきたことが分かります。しかしながら、時価総額の合計は、平成元年(1989年)で約147兆円に対して、平成30年(2018年)では約160兆円とあまり増加していません。

また、現在の時価総額ランキングに名を連ねている企業は統合・再編や民営化により上場した企業が多く、最も若い企業でも1981年に創立したソフトバンクグループで36年となっています。

米国NASDAQ市場との比較

一方、米国NASDAQ市場に目を向け、上位20社のランキングを見てみます(表2)。平成元年(1989年)時点の情報収集が困難なため、ITバブルピーク時の2000年3月の時価総額との比較となり一概には言い切れませんが、5社を除き上位の企業は変わっています。更に平成年代(1989年代)に設立された企業が7社あり、時価総額の上位にはアマゾン・ドット・コム、グーグル、フェイスブックと日本の市場とは大きく異なっています。このように米国では産業トレンドの変化とともに新たなプレイヤーが新しい産業構造を築き市場のリーダーとなり、企業自体の新陳代謝が進んでいる、一方で日本では新しいプレイヤーが登場するもののなかなか市場のリーダーとなる新興企業が現れず、企業の新陳代謝が進んでいないのではと感じます。

 

ちなみにニューヨーク証券取引所の銘柄も含めた米国の上場企業全体時価総額上位20社では、ナスダック市場上位5社が同様に上位を占めています(表3)。

すそ野の広い日本の中堅中小企業の実態

次に日本に存在する企業の大部分を占める中堅中小企業の動向も見ていきます。
まずは、休廃業解散数と倒産件数の推移を俯瞰してみます。(図2)平成に入ってからはバブル崩壊の影響もあり、倒産件数は平成13年(2001年)まで増加し、その後今日に至るまで減少の一途を辿っています。一方、休廃業解散件数については平成12年(2000年)からの統計のみとなりますが、平成15年(2003年)から右肩上がりに増加していき、平成28年(2016年)には年間30,000社程度の企業が休廃業、解散となっています。

これは、人材面、商品・サービス面でこの先事業を回していくことが難しいため、休廃業・解散を選択している企業が増加していることになります。

実際、帝国データバンクの調査では、社長の平均年齢は統計を開始した平成3年(1991年)の54.3歳から平成28年(2016年)の59.3歳と5歳も高齢になっています。一方で、交代率は平成28年(2016年)には3.97%と4年連続で前年を上回っている状況ではあるものの平成3年(1991年)の4.96%と比較して低水準であり、次代の後継者へ引き継げられていない現状が企業の休廃業や解散の多さにつながっていると思います。(図3)

最近では事業承継に向けた相談件数や実際の事業引継ぎ件数は増加してきており、上場している主要承継M&A企業でもM&Aセンターで332件(18年3月期)、M&Aキャピタルパートナーズで111件(17年9月期)、ストライクで67件(17年8月期)の年間承継取引の実績がありますが、休廃業・解散企業の実数を見ると経営者が経営を次世代にバトンタッチできていない状況となっています。

 

前回のGDP編と合わせ、平成をおおまかに振り返りました。平成24年(2012年)12月から数字上は好景気が続く日本経済ですが、皆様はどのように感じていますでしょうか。来年5月には平成から新元号へと変わり、元年(2019年)9月にはラグビーW杯開催、10月には消費税率10%への引き上げ、二年目(2020年)には東京オリンピック開催と日本に影響を与えるイベントが予定されています。平成を懐かしみながら、明るく過ごせる新元号の時代が創られることを期待しています。

河井 稔夫

アクセンチュア、日本駐車場開発、フロンティア・マネジメントにて、製造業を中心に幅広い業種、ならびに大企業から中堅・中小企業・商店街まで、様々なステージにおける業務改革及び経営管理体制の構築、経営計画策定支援からITプロジェクトまで実績多数。オペレーション分野の強みを生かした営業企画及び業務生産性向上プロジェクト、組織変革、ならびにシステム設計・構築による成果に貢献した経験を活かし、TRAIL INC.に参画。

 

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