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経営プロフェッショナル Vol.4 木﨑 重雄 氏

2020.08.17

 

経営プロフェッショナル Vol.4 木﨑 重雄 氏
ビジネスを取り巻く環境が急激に変化し続けるなか
経営プロフェッショナルたちの、経営・業務執行における哲学やポリシーとは何か

 

大手経営コンサルティング会社において13年以上にわたる戦略立案および防衛・安全保障分野の実績と、海外での事業再生の実務経験を有する 木﨑 重雄 氏。新規事業の成否を分けるポイントについてお聞きしました。(本インタビューは2020年6月に実施されました)

 

木﨑 重雄 氏
新日本製鐵株式會社(現:日本製鉄株式会社)に10年間勤務後、大手経営コンサルティング会社(※ジェミニ・コンサルティングおよび Booz & Co)に13年半在籍。情報通信業界の新規事業戦略策定、企業再生ほか、防衛・安全保障分野でのコンサルティング事業を立上げる。IBM理事を経て、中堅企業の事業再生投資会社の代表取締役に就任。その後、買収した電機メーカーにCEOとして赴任。東証一部上場のフーチャー社株式会社では執行役員として新規事業の開拓、グループ会社経営を担当。2019年3月 キザキ・エンタープライズ株式会社設立。マザーズ上場のビリングシステム社非常勤取締役に就任。
上智大学国際関係法学科卒
※現:Strategy&(PwCコンサルティング合同会社)

 

■ 基盤のない中で新しいことをどう始めるか

 木﨑さんは、大学卒業後に新日本製鉄へ入社されて10年。その後、経営戦略コンサルティング会社に転職し、新規事業の戦略立案および防衛・安全保障分野においてコンサルティング事業の立ち上げに10年以上携われてこられたということですね。

木﨑 はい、経営コンサルティング会社にはおおよそ13年程いました。

 その後、日本IBMに移られて、そこでも引き続き防衛系のお仕事をされたのでしょうか。

木﨑 そうですね。安全保障分野でのコンサルティング事業を立ち上げようという狙いでIBMに入ったのですが、入社して1年過ぎた頃、東日本大震災が起こりました。当時、防衛の仕事をしていたのですが、震災復興のリーダーを任せられ、それから2年間仙台で復興活動に取り組みました。復興支援が一区切りついたタイミングで、たまたまですが前職のコンサルティング会社の同僚が事業を立ち上げるという話で、中堅企業の再生を投資も含めてするということで興味を持ち、一緒に立ち上げていくことになりました。

新日鉄の後半ぐらいから、経験値がないところから新しい事業を立ち上げ、転職した経営コンサルティング会社でも、会社およびクライアントの案件としても新規事業立ち上げがほとんどでした。IBMに在籍していた時の震災復興も含めて、ずっと基盤のない中で新しいことをどう始めるかということをやってきました

 

■ 新規事業には、トップダウンで号令が必須

 経営に携わる上で、とくに「事業の立ち上げ」に関しての哲学やポリシーはありますか。たとえば、企業にとっての新規事業の意味合いなど、教えてください。

木﨑 ポリシーというか、そうせざるを得ない環境にいたこともありますが、新日鉄で新規事業をやっていた頃も、会社としては大不況で大変な時期で新しいことに取り組まなければいけないという危機感やコミットというのが、ものすごくあった時期でした。再生を請け負った企業でも同じ状況でした。
一方で、自身の性格としては、同じことを長く続けるようなことは向いていないと感じており、危機的というか、切羽詰まった状況になった時に、とにかく何とかして2~3年間をどう繋いでいくのか、何か新しいことを始めて次にバトンタッチできる環境をゼロからひねり出していき、新しくできた基盤を次の人たちに引き継いでいくことが自分には合っているのかと考えています。

今、65点のもの75点にしようっていうようなことは、あまり向いていないような気がします。ゼロをとにかく30点くらい取れるところへ引き上げないことには先がなく、そこをどうするのかということですね。そのような事の方が、自分として役に立つと思ってやってきたと思っています。

 少し話は戻りますが、大企業での新規事業となると色々と難しいこともあったのではないでしょうか。また、企業再生の時も社内で既得権益を守ろうとする人達がいる中で、どのように事業を立ち上げていき、流れをつくっていくのかということにつきまして、これまでのご経験を含めて重要なポイントなどがありましたら教えてください。

木﨑 既得権益のところで真正面から衝突ということはあまりなかったと感じています。それよりも、自分は別に反対ではないけど、こういうこと気にする上の人がいるのではないかといったこと言ったりする人がいて、まさに忖度の嵐になってしまう。それをどう排除するかがとても重要で、本当に物事を分かっている上の人をきちんとおさえて、その人がいいと言っているのだからと押し切るとか、あるいは既成事実をつくるとか、いろいろとやり方はありますが、そういうところをどのように突破するかの苦労はありました。
経営コンサルティング会社の時には、新しい分野として防衛分野を開拓しようという時期でした。各論のところで色々と衝突はありましたが、総論のところでトップダウンで号令がかかっていたので、全社として進めて行くことができていました。トップダウンなど無しに、単にボトムアップで草の根的に新しいことをやっていくということは非常に難易度が高いと思います。

 その木﨑さんの突破力、やりきるチカラはどういうものだったのでしょうか。

木﨑 振返ってみると自分の得意技はとにかく動き回ることです。いろいろな人に私から会いに行きます。リクルーティングもそうですし、パートナーの人達にしろ、場所が地方であってもどこであってもとにかくまず会いに行く。
とくに自分がトップに近い経営側の人間であるときは、自ら行動し、相手に自分の姿を見せ何か言う。それだけでもインパクトは得られます。それでもって切り開けることは、かなりあるのではないかと思っています

 

■ イスラエル企業ともネットワークを構築

木﨑 昨年に自分の会社を立ち上げ、あまり何をするかを決めずに始めたところがあるのですが、1年間やってきた中で、ここ半年でイスラエル企業との接点が随分できました。きっかけは知人がイスラエルにいたこともありますが、昨年9月に初めてイスラエルに行ったことからです。ある仕事関連の人達との話の中で彼らがイスラエルに出張することを聞き、興味深い話だったため、自費で私も一緒に行きました。それ以来、現地の方からいろいろな問合せを受けており、自分ではあまり意識したことはないのですが、頼りにしていただいているようです。とにかく自分自身が好奇心を持って動き始めると、何かこう反応が返ってくる。反応が返ってくるためには、まず自分から動き反応を貰ってまわる。そういうことは地道な話なのですけれど大事だなと思います。

ー イスラエルは世界のIT関連の先端技術を牽引していますね。

木﨑 そうですね。サイバーセキュリティやフィンテックなどハイテク系は多いです。あとは医療関係で今はまさに新型コロナウィルス対策です。イスラエルの人達も長い歴史を生き抜いてきた、したたかな人達です。人的ネットワークを活かしながら、どのように拡げるかということに関して相当な経験値があります。このように人脈をつくり、お互いWin-Winの関係で仕事をしていくのかと実体験をしながら見ていると、一つの勝利の方程式のようなものがあるのだということがわかります。

ー イスラエルに具体的な計画や目的があって行ったわけではないということですが、これまでも先入観や思惑がないところから生み出されるものはありましたでしょうか。

木﨑 そうですね。何となく話していくうちに、そういうことに関心があるのであれば、こういう人がいるので会ってみますかという感じで人を紹介され、ビジネスに繋がることはありました。実ビジネスそのものではない周辺情報のため、そこから先は踏み込めるかどうかの判断が必要で行動力が問われるのですけれど、きっかけはそういったふとしたことからということはあり、四角四面に計画し、マーケティングして、片っ端から電話で営業活動をしたからといっても、まずそのようなことは起こりません。本当に面白い大きな話というのは、そういったルートでは来ないなと経験的には思います。

■ 新規事業の成否を分けるポイントは

 とはいえ、新規事業に取り組んでみたものの鳴かず飛ばずで終わってしまうと事業担当の方のお話をお聞きすることもあります。新規事業が上手くいく場合、いかない場合の特徴やポイントはどこにあるのでしょう。

木﨑 新規事業の立上げは、顧客の種類が違う、製品分野が全く違う等、入口が高く難しいと思うのですが、いざやり始めてみるとこれまでやってきたことが実は本質的に変わらず役に立つことや、前から持っているものが他にはない強みであることがわかることが結構あります。逆に、そういうものが全くなく、頭で考えたことだけで事業になることは、相当難しいのではないかと思います。

記憶に残っている一つに、新日鉄での金融システム関係の新規事業の立ち上げがあります。普通に考えたら、鉄鋼メーカーがなぜ金融なのかと不思議に思われると思います。まったく違う分野であり手探りで不安の中、取り組くんでいたが、実は大きな経験値を持っており、それが役に立つとわかったときに親近感が沸くというか、自信をもって戦えるなという感じでした。そういう気づきはとても大きいものだったと思います。

自信を取り戻し、力を発揮する機会が目に見えて出てくると、不慣れなところでお客様から怒られ、気持ちはへこみやすいのですが、少なくとも3分の1の自信が心の中にあれば、頑張れると思っています。旧来持っていたチカラと外の世界とのインターフェースの部分で、いろいろな新しい分野にチャレンジすることを上手く両立できるようにしていければ、持続力のある新規事業をやっていけるではないかと思います。

 新規事業が失敗するパターンは、バックグラウンドで培ってきたものがないところに突っ込んでしまったり、さきほどの方程式のように、実は使える強みや経験に気づかずに活用できなかったり、なのでしょうか。

木﨑 立ち上がったものを、いかに軌道に乗せ、長く続けさせることへの動きがとても重要だと思います。
たとえば、ニッチながらも世の中の注目もあり立ち上げた新規事業で、その後成長したにもかかわらず、結局継続できなかった事業もあります。それは今お話したような本業との関連性があまりなく、継続していけるストーリーがないということがありました。社内から人材を追加したくても、あまりにも別世界のものをやっているため難しく、続けていくには外部から人を採用するしかないということになる。これが、ずっと続くと、いったい何のために続けるのかと問われやすくなり、説明し続けるのも辛い。そうすると、社内で続ける意味がなくなり、社外に売却しようという話になる。
企業がそれなりに自分達の主力事業となんらか人的なあるいは技術的な重なりを感じられるものであった方が、続ける意志を持続できる気がします。新しいことに対する持久力というのは大変重要で、最初の小さな成功まではできたとしても、その先続けられるかどうかがとても重要です。これまで長くしっかりやってきたことと新しい知恵をあわせて、アイデアだとか技術や人を乗せていき、初めて続けることができる。長いスパンで見た時、それまであったものと新しいことをいかに上手く掛け合わせてやっていくかが、新規事業の成否に関してとても大事です。

 事業を継続するか否かの判断基準は、どのような観点から判断されるのでしょうか。

木﨑 会社の経営が苦しくなり、余剰人員の雇用をどう維持するかという観点で、新規事業を始めることもあると思います。時間軸で会社全体を再建しようとしている時、余っているリソースをどう将来の利益につながる活動につなげるかということが重要です。今のコストをどのように、今の収入で穴埋めするか。厳しい局面があるかもしれないが、なんらかの財務的な手当てによって少し時間が稼げる状況であれば、やはり将来利益を生む見込みと本業との親和性があって皆で頑張れると思える事業に、その人材を投入するのが正しいはずであると思います。短期的なつじつま合わせの新規事業は止めようということが経験としてあります。

また、自分達の強みを活かせることが有った方が新規事業は続けやすいと言いましたが、自分達の強みだけを見て安易に他のところに使いながら、なんとか生きていこうというのは、話の順番が違います自分達が思っている能力の方を先に考え、そこから隣にでてみようかと考えても世の中そんなに甘くない。よく言うブルーオーシャン、レッドオーシャンのような話で、やはり安易に横展開できる話というのは、大概レッドオーシャンです。そうではなく、誰か実際に困っている人がいるということ、すなわち供給が限られていて需要が満たされていない現実があることが重要であり、その前提があった上で入っていかないと結局は消耗して終わりになってしまうのだと私自身の経験から強く思います。
相手がなぜ新しいものを欲しているのかの理解が進み、厳しいけれども結果としてなんとかやれると思える。そこで初めて、需要と供給がマッチするのだと思います。ただ、本当にやりきるためには、人材の確保が不可避であり、自社の社員あるいは新しい人材の採用を含めて努力する必要があります。

 今後、取り組んでいきたいプロジェクトや方向性などはお持ちでしょうか。

木﨑 はい、これまでのコンサルティング、IT・通信業界いろいろやってきました経験から、たとえばB2Bの新規ビジネスのお手伝いが一つの領域だと思います。
日本の地方企業では、最初から海外ビジネスに距離を置いてしまっているところがあります。海外に向けて新しいビジネスを考えたときに、商社や代理店任せで、自分達は製造に特化している所は多いのではないかと思います。ものづくりに強みがある人達が、どうやって自分達の能力が世界の誰に役に立つのかについては、あまり分かっていないし、わかるチャネルもない。本当に宝の持ち腐れだと思いますし、それは日本全国に多々ある事象だと思います。しかし、そこをどうやって打破していくか、自分達がどのように役に立つのかということを知るためのアクションを取りながら、いろんなことに気づいていくことで、新しいビジネスが見えてくる、といった潜在可能性が多くあるように思います。その背中を押しながら前進するお手伝いができればと思います。

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