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経営プロフェッショナル Vol.3 久門 哲雄 氏

2020.06.26

 

経営プロフェッショナル Vol.3 久門 哲雄 氏
ビジネスを取り巻く環境が急激に変化し続けるなか
経営プロフェッショナルたちの、経営・業務執行における哲学やポリシーとは何か

 

アメリカでの実業体験をベースに幅広い業種の経営支援実績と、戦略・現場両面においてフレキシブルで実務的な能力を有し、オープンマネジメントでのプロジェクト実績のある 久門 哲雄 氏。数々のエピソードから見えてくる、経営のポリシーについてお聞きしました。(本インタビューは2020年6月に実施されました)

 

久門 哲雄 氏
都市銀行にて12年間ニューヨークに駐在し、米州地域子会社統括、子会社ニューヨーク証券取引所上場、経営企画、業績管理、M&A、人事・法務・財務・税務等管理業務に従事。
家具・生活用品小売業にて米国出店を現地統括(ロサンゼルス)。その他、多くの企業にて経営陣として海外戦略を含む経営戦略策定及び実行に従事。日本貿易振興機構(JETRO)の新輸出大国コンソーシアム専門家として採択。みずほ総合研究所において、海外子会社の内部統制と管理体制作りについて講演。2016年 株式会社ジェイビヨンド設立。
東京大学 法学部卒、ニューヨーク大学ロースクール修士(LL.M)卒業

 

■ アメリカ大企業ビジネスに深く参画

 本日は、よろしくお願いいたします。久門さんは、銀行および事業会社で、ご経験豊富でいらっしゃいますが、まずはこれまでのご経歴を、お聞かせいただければと思います。

久門 はい、よろしくお願いいたします。私は、大学卒業後銀行に入社し、支店と調査部に勤務した後、ニューヨーク大学のロースクール、及びコロンビア大学への留学、またローファームで半年間の研修とアメリカに2年間留学しました。ちなみにローファームと言っても、私は弁護士でもなく、半年間のため、大して仕事を任されたわけではなかったですが、その時、アメリカの弁護士の仕事ぶりを傍で見ていて、とにかく猛烈に働く人達でプロフェッショナルとはこういうものかと、非常に勉強になりました。

帰国後は、まず為替のディーリングを担当しました。切った張ったの世界は好きではなかったのですが、今から思うと相場の世界に少しでもいられた事は良い経験でした。
その後、スワップ・オプション等いわゆるデリバティブを使った金融商品の開発および販売をする「金融商品開発部」という新規部署で商品開発をしました。当時まだ20代でしたが、新規部署で商品開発だけでなく販売もやりました。また、当初はデリバティブ商品の開発でしたが、日本で証券化が注目され始めた頃で、証券化の担当として一から立ち上げることにもなりました。法学部出身にも関わらず、法律があまり好きではなかったのですが、証券化を担当した際にファイナンスだけでなく、法律や税務などを組み合わせてストラクチャーを組むことが、こんなにも面白味があるのだという経験を初めてしました。

その時に米国大手投資銀行のニューヨーク本社に半年間研修に行き、証券化の業務そのものというよりも社員の評価制度やインベストメントバンカーの組織の在り方、働き方を目にし、これも大変刺激的で大きな学びとなりました。
1993年からアメリカに駐在し、北中南米の全体戦略を考える「米州部」という部署で現地法人の企画管理を担当しました。当時、かなりの金額を投じて買収した企業の立て直しが大きなミッションでした。私が配属された時点では、かなり持ち直してきており、どちらかと言うと、次のステージに行くための成長戦略に変わりつつある時期でした。オートノミーと言いますか基本的に現地の人員に経営はすべて任せるスタイルで、私も役員としてボードミーティングにも参加し、アメリカの大企業ビジネスに深く参画できたことは、非常に大きな経験となりました。

 ニューヨークでの駐在はいつまでだったのでしょうか?

久門 2003年まででした。2001年9月には、テロがありました。私のいた銀行もワールドトレードセンターにあり、あの日私もビルにおりました。当時、銀行の統合をやっていた中で、上司や同僚も犠牲になり、ビルも無くなりと、精神的にダメージを受けている中で、統合業務もしながら通常の業務復興もやるという、いろいろな意味でとても大きな出来事だったと思います。

■ 経営陣としてターンアラウンド、CFOとしてアメリカでの現地法人設立、5店舗出店を果たす

 それらがひと通り終わり、2003年に帰国した後は営業部で自動車関連・自動車部品メーカーを中心とした大企業を担当しました。初めての営業でしたが、大変良い経験となりました。これを機に銀行員よりも実業をやりたいという思いが沸々と強くなっていきました。2006年に銀行を辞め、いわゆるファンドへ転職しました。ただ、ファンド業務ではなく、投資先企業へ行きたいという前提でしたので、入社後すぐに航空測量・建設コンサルティング会社へ経営陣として派遣され、ターンアラウンドを行いました。実業の世界は初めてでしたが、新規事業計画の立案や新規業務構築、M&Aなど、あらゆる事をやらせていただきましたので、1年間でしたけれども非常に多くの学びを得ることができました。

その後、1社挟んで家具・生活用品小売会社に入社しました。そこは、現場をとても大事にする会社で基本的に最初は皆、店舗勤務をします。私も1年ほど店舗勤務をした後、本社で持株会社体制へ移行する「持ち株会社プロジェクト」に参画し、持ち株会社を設立、物流部門を物流子会社として分社化、そこへ移り企画担当マネージャーを担当しました。2011年の東日本大震災時には物流センター自体が被災し、本当にモノが動かないという経験もしました。
その後、アメリカ出店プロジェクトに参加しました。この背景には入社する際、最後のインタビューが現会長だったのですが、その時に会長から「ずっとアメリカからいろんなことを学んできて、それを日本でできないかとここまでやってきた。そろそろアメリカに行きたい」と伺って、自分の経験も活かせるのではないかと思い、この会社に入社した経緯がありました。2年間、ロサンゼルスで現地法人のCFOとして現地法人の設立、5店舗の出店をしました。

帰国後しばらくその小売会社にいた後、別の会社で経営企画・管理業務を行ったのですが、以前から抱いていた自分でやりたいという気持ちが沸々と湧き上がる中、そろそろタイムリミットだと感じ、今から4年前の2016年に会社を立ち上げました。

 これまでお伺いしたお話を振り返るとバブルの崩壊、2001年アメリカのテロ、リーマンショック、東日本大震災といった大きな出来事に直面したことが転機になってきた感じなのでしょうか。

久門 本当にそれぞれが偶然ですけれども、大きなきっかけになりました。
バブルの崩壊は日本全体の話ですが、特に自分にとって身近だった災害は仕事だけに閉じた話ではなかったこともあり、大きな人生の転換点ではありました。それをきっかけに、少しずつですけれど自分自身を変えてこられたことは、よかったと思います。

 久門さんは、海外、特にアメリカに強みを持っていることはこれまでのお話から伺い知れるのですが、他にご自分の強みをどのようにお考えでしょうか。

久門 そうですね、強みというか、自分が経験してきたことで言うと、銀行では新規商品開発の部署で事業の立ち上げ、小売会社では海外事業・アメリカ事業の立ち上げと、新規事業の立ち上げはいろいろとやってきました。一から新しく始める時に、過去自分が経験してきたいろいろなことを組み合わせ、構築していくことが、まさに新規事業の中では必要ですので、そこはとても自分の軸になっているなと思います。

■ 重要なことは、現場主義と当事者意識。多面的な見方を尊重しリスペクトする

 新規事業という大企業も含めてですが、事業として軌道にのせるのに苦労されている企業も多くあると思います。なかなか利益を出せないことや、既存事業が既得権益を守るために足を引っ張るなど色々と障壁があるかと思うのですが、久門さんのこれまでのご経験から新規事業をうまく立ち上げるためのキーになるポイントがあれば教えていただきたいのですが。

久門 新規事業に限ったことではないですが、私が大事にしてきたことがふたつあり、そのひとつが現場主義です。先ほどお話した小売会社の時は、店舗勤務やその他いろいろやりましたけれど、その中でやはりすべては現場から始まるのだと感じました。そこに自分も身を置き、自分で見て、自分で聞くことが第一に必要で、今までの自分のバリューになってきたのだと思います。
もうひとつは、当事者意識です。自分で責任や役割を明確にし、リスクをとること。私自身はもちろん、経営としては当たり前の事ですが、チームにいる人達が皆、そういった当事者意識を持つことが本当に大切ですし、ましてや現在のようにコンサルタントやアドバイザーという立場になると、尚更、意識して当事者であることが必要だと感じています。
例えば、今現在も営業をやっていた時もそうですが、自分が担当している企業について、とにかくその会社の商品やサービス、従業員を自分で本当に好きになっていくこと。あるいは、良いところを初めに見つけること。そういうところから始め、自分自身も当事者意識を持つようにする事をやってきたつもりです。それらは信頼感をつくる上でも重要だと思っています。
また、海外に長期駐在したことも背景にありますが、外国にいるといろいろな見方がありますし、アメリカ人も好き勝手なことを言う人が結構います。だからこそ、多面的な見方を尊重する、リスペクトする。これは、本当に重要なことで、自分自身も、現場を見たから、経験からこうだと言うだけではなく、お客様の立場から見てみる、従業員の立場から見てみる事。これによって多面的な見方ができるようになり、リスペクトもできる。こういったことが重要で、チーム全員がそうすることでうまくいってきたのかなと思います。

 現場主義や当事者意識は非常に重要だと思います。一方で、現場主義や当事者意識をし過ぎると現場に流されてうまくいかないこともあるのではと感じています。上手く回すためにはマクロ的な視点や、先ほど仰っていた多面的なリスペクトというのが非常に重要となるということでしょうか。

久門 そうですね。やはり自分だけで現場を見ているとそういったリスクもあり、どうしても凝り固まった見方しかできなくなる。だから、いろいろな意見を聞く必要があります。また、現場を見るときに事実のみを積上げ、理屈からロジカルに言うとこうだろうと、実際そうなのかもしれないが、もう一つ重要なことは感覚をつかむことだと思います。いくら分析してみてもロジカルで判断できない時、最終的には感覚で決めなければいけないところがあり、感覚を含め現場で自分自身を鍛錬していると最終的に「えいっ」と判断できるチカラが養われるのだと思います。事実と感覚のバランス、もちろん若い頃はそう上手くは行かず、年の功でもあるかと思いますが、自分自身で意図した訳ではなく、これまでの様々な現場、業種、規模、組織の中での経験によって、自然と自分の中に多様な引き出しが作られてきたのだと思います。

 感覚を磨くというのは、人それぞれになってくると思うのですが、これまでのご経験も含めて、久門さんご自身は、やはりアメリカでの実務経験が大きいでしょうか。

久門 それは大きいと思います。さきほどアメリカ人は、好き勝手なことを言う、自己主張が強く、当事者意識もそれほどない人が多いイメージがあると言いましたが、実際は驚くほど当事者意識の塊みたいな人が多く、特にプロフェッショナルだと思う人は基本的にそうです。単に分析的にやるだけではなく、パッションを持っている。そういう人が仕事も組織も動かすことができるのだという事をアメリカで目にしてきました。
そうはいっても、アメリカにいて私自身ずっと劣等感みたいなものがありました。それは、なんとなくアメリカの方が先を行っているように感じていたこと、そもそも英語が完璧ではなくコミュニケーションができないこと。また、例えば財務・法務・営業など、それぞれが業務のプロフェッショナルであり、ずっとその道でやってきている人が多く、真のプロフェッショナルな訳です。その中に私のような銀行員のゼネラリストがいっても、知識、経験では全く太刀打ちできない。そういう意味ではずっと劣等感をもっていて、それ故にいろいろな事を聞きたい、聞かざるを得ない。こういった事が、なんとなく感覚的に身に付き、独善的なところを修正することができる機会になったと思います。

 アメリカのプロフェッショナルとは、久門さんのご経験を以てしても劣等感を感じるほどのものだったのですね。

久門 銀行にいた時はそう感じていました。ただ、帰国後、事業会社に移り、それこそ小売会社にいた時には、インベストメントバンカー的なバックグラウンドがある訳でもなく、それこそ現場でずっとやってきた人や高卒やアルバイトから正社員になった人が多かったのですが、そういう人達もとても優秀でした。本当にびっくりするくらい優秀で、当事者意識もある。国だとか、人種だとか、学歴だとか関係なく、プロフェッショナルな意識を持っている人は、どこにいても誰であってもすごいなということを感じました。また、そういう人が集まっていることがこの小売会社の強さだなと今は感じていますし、必ずしもアメリカだけが優れているという訳ではないと思っています。

■ 国内ビジネス及び、海外への輸出・進出、組織再編・撤退、M&A、海外人材育成などグローバルに支援したい

 これから取り組まれたいこと、またはどのようなプロジェクトやお仕事をされて行かれたいですか。

久門  やはりグローバルにビジネスをやっていこうと思っています。私の支援先は基本的に中小企業が多いのですが、その企業の皆さん本当に必死にやっておられます。海外に向けてグローバルにビジネスができるだろうと思うし、それを支援したい気持ちはあります。

私自身の駐在経験はアメリカのみで、それ以外の地域に関して知識的・経験的に少ないという面はありますが、グローバルのビジネスは輸出や進出だけではなく、組織再編やM&A、撤退といったものを含め共通しているところが多くあります。また海外子会社の管理する側、管理される側にいましたので、経営管理体制をグローバルに構築するお手伝いはできると思います海外業務の支援をしていて一番感じるのは、人がいないので困っているということです。本当に海外のビジネスをやりたいという人が、そもそも少なくなってきました。特に中小企業の場合は、こういった人材がいないことに一番困っており、その人材育成のお手伝いができればと思っています。また、国内のビジネスでも、今は皆さん悩みが深くなっていると思います。新規事業開発、経営管理体制、あるいは財務戦略等、場合によってはターンアラウンドの支援もお手伝い出来ればと考えています。

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