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経営プロフェッショナル Vol.2 濱田 淳二

2020.06.08

 

経営プロフェッショナル Vol.2 濱田 淳二
ビジネスを取り巻く環境が急激に変化し続けるなか
経営プロフェッショナルたちの、経営・業務執行における哲学やポリシーとは何か

 

CFOの経験を有する、弊社 シニア・ディレクター 濱田 淳二よりお届けします

TRAIL INC. 
シニア・ディレクター 濱田 淳二
KDDIを始めとして、複数の事業会社にてITを中心とした事業領域を中心に大手企業から新規上場企業及びベンチャーまでの幅広い経営ステージの管理実務を経験。 計10年以上にわたって経営管理/企画部門及びグループ子会社を統括し、上場に耐えうる組織を整備し連結体制を構築したCFOとしての実績。 M&Aから投資後の再編や事業再生まで複数手がけ、管理部業務全般に至る豊富なマネジメント経験を有する。 帝京大学大学院 経済学研究科卒

■「日本型コントローラー」の機能を果たし、経営管理の最適化を目指すこと

  私がCFO・管理担当役員の経験を通して思うことは、マネジメントの視点から管理部門が経営効率を高める有効な手段のひとつに、中小企業の管理部長またはCFOが、「日本型コントローラー」の機能を果たし、経営管理の最適化を目指すことがあると考えています。ここでいう「日本型コントローラー」の定義は、欧米型のように機能分化がはっきりとした環境で、経営管理、特に管理会計に傾倒した機能を果たす場合とは少し異なります。日本の中小企業の多くは、リソースが限られることで財務会計と管理会計の役割が曖昧となり、結果、経営者からこれらの機能が見えにくく属人化することが起こりやすい環境にあります。一方で、経営の意思を受け入れたオペレーションの課題が容易に把握され、管理部門が自律的に解決・提案を進めることで、相互の情報交換が頻繁に発生し、効率の良い経営管理体制が実現していくと考えています。これを支えるのが、環境変化を恐れない課題解決力を備えた管理部門の組織運営および、それを担う人材育成であると考えます。それらは、まさに私自身の経験から得られたものです。足元からの実務課題と経営課題解決の両方の課題に向き合い、手間がかかっても一つ一つ解決し、誠実かつ着実に経験と信頼を重ねること。経験に勝るものは無し。そしてこれは、限られた企業ではなく、すべての企業共通の課題なのです。

■日本型経営におけるCFOの役割は、企業の長期成長のため、常に事業・経営との連携を保つコントローラーとしての役割を果たすこと

 日本型経営におけるCFOの役割は、企業の長期成長のため、常に事業・経営との連携を保つコントローラーとしての役割を果たすこと。ダイナミックで目立つ財務戦略やM&Aだけではない。ここに憧れることをよく耳にするが、中小・成長ベンチャーであるほど実務で求められる役割の多くは実に泥臭い。能動的関与が必要であり、かつて使われた受け身の「中間管理職」とは明らかに役割が異なります。まさに経営の一端を担う重要な役割と考えます。私自身、管理担当役員としてベンチャー企業を東証マザーズに上場、そしてグループ経営化へと拡大を進めるなか、最初はそれぞれの立場を理解しながら何とかバランスを取ることに苦心しましたが、「プレイング役員」という立場で上場会社の経営に関わり、試行錯誤を繰り返していくうち、やがて一人で悶々と苦労することよりも、それぞれの事情と選択肢を予め斟酌し共生できる環境を作ること。これが最も効率的であり、結果として、管理部門組織全体で自律的な行動ができる組織へと成長していくことを身をもって経験しました。管理部門が禁止事項だけを発信する監視組織ではなく、攻めと守りの両輪において事業のリスクマネジメントの一翼を担うパートナーとしての経営機能を果たせる役割を担うこと。ここに向き合ったことが今の私の原点となります。

■根源的な論点を見出し、経営者に受け入れられる改善提案、そして自ら実行できる自律改善力を備える

 これまで財務経理を軸として経営管理に関わる管理部長・管理担当役員の仕事を、大手企業、スタートアップベンチャー、上場ベンチャーなど、様々な企業のステージや体制で実践するなかで、経営側も実務を進める現場も、その多くは、常にそれぞれの課題に真剣に、そして誠実に向き合い、最善を尽くそうとしています。一方で、それぞれの立場を斟酌した全社最適化の意識が薄いことで、お互いに実施してもらいたいことと、できることについて共通認識や、コミュニケーション不足が常態化する。その結果、部分最適のまま経営と現場が次第に反目するまでに至り、管理部門が破綻するケースをたくさん見てきました。

例えばこんな事例があります。いつも忙しそうで残業している管理部門。事業側(経営側)が主要な外注先の請求が届かないために、月次決算は〆切が遅れ、極めて短期間の綱渡りの処理を実践している。これを現場作業者に聞くと、「どれだけ依頼しても請求書は月次決算締め日の前日か当日に届くため、思うように月次数値資料が揃わず、そこから報告資料を深夜にかけて作成することになる。更には、働き方改革といって残業が咎められる。これでは、もうやっていられない。」一見、外部関係者も関わっており、解決への道のりが複雑かつ、困難であるように思えるが、「請求書が届かないと作業が始められない」というのは、実は現場の思い込みであり、経営者は誤った経営判断をとならなければ良いだけである。そう考えると、重大な差異が出ない限り、期日に届かないものは概算で処理することを、コントローラーが下記項目に沿って現場と経営者に確認する。そして合理的であれば、両社の意に叶うルールとして決めていくことで、一つの事象が最適化する。

1.その取引先の数値の変動パターンはどうか(固定?季節変動?)

2.この取引先の費用情報の精度が、月次決算で経営判断を左右する情報か?

繰返しになりますが、概算で算定できるパターンを作成し、概算計上しても経営判断にはほとんど影響しない。むしろ割切って処理を早め、経営者に経営数値を渡す時間を早めることが、本来最も経営に資する。つまり、会計の現場は受け取ったものを正確に処理することであり、請求書がないと処理ができないと思い込んでいる。一方、経営者は月次になるといつも管理部門がカリカリ苛立っているが、こんな簡単なことを判断するだけで解決するとは知らなかったという典型的な事例です。さらに一時施策として当該事象は解決したとしても、同じようなことが日常的に繰り返し起こる現実から、常態的な環境変化への対応力を身につけることが必要です。

こういった面からも管理部門は、自らの業務の効率的な遂行のため、常に業務が進まない理由や課題の原因について、根源的な論点を見出し、経営者に受け入れられる改善提案、そして自ら実行できる自律改善力を備える必要があります。また一方で、経営者にリクエストを正確に伝えるとともに、提示された選択肢を尊重しながら相互に進める組織的判断と行動力を、成長しながら備えることできるかどうか。事業継続の過程で発生する様々な危機を乗り越えられる企業か、それともやがて管理部門を震源として内部崩壊して崩れてゆく企業かの分水嶺になると考えます

■攻守役割の調和に知恵を絞ることが、成熟した社会、国際競争下で例外なく求められる価値

 このような管理部門の役割として認識すべき攻守ともに志向する自律推進機能は、企業成長の過程や上場準備の過程では誰も教えてはくれません。気付くしかないというのが現状です。経営環境が目まぐるしく変わる近年、特にベンチャーを中心とする中小企業を営む環境下では、いったん決めたルールや制度の陳腐化も速く、管理部門は変化対応型の組織としての活動を意識する必要があります。つまり、管理部門メンバーも自律推進できる能力を身につけてゆかないと、拡大する事業や企業規模には到底追いつけない。守りのみの管理部門から、攻めと守りの両輪を担える組織となることが必然です。ルールは常に相対的に変わっていきます。これを常態として受け入れて常に制度疲労を起こすところを作り変えていく。ただし、法令や企業倫理は厳守。

事業部門の行動や意思決定の志向を常に理解し、意思決定前にコンプライアンスチェック、内部管理、監査への合理的な説明に耐えられるかを検討すること。コンフリクトする場合には、選択肢を事業部門に提示し、全てがバランスされた状態で選択し事業意思決定に進むこと。これを理想とした活動の要にいるのが管理部門であり、先に重複するが日本型経営の企業においてCFO・管理担当役員の役割は、財務戦略やM&Aだけが役割ではありません。実に多くの役割は泥臭く、常に事業・経営との連携を保つコントローラーとしての役割を果たすことにあります。管理部門といえども成長に伴う宿命と向き合い、攻守役割の調和に知恵を絞ることが、成熟した社会、国際競争下で例外なく求められる価値であります。この必要な役割に気付かないままに経営効率を悪化させ、苦労している企業が多いのではないでしょうか。

 

 

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