お知らせ/コラム

NEWS/COLUMN

経営プロフェッショナル Vol.1 杢野 純子

2020.05.29

 

経営プロフェッショナル Vol.1 杢野 純子
ビジネスを取り巻く環境が急激に変化し続けるなか
経営プロフェッショナルたちの、経営・業務執行における哲学やポリシーとは何か

 

CMOの経験を有する、弊社副代表 マネージングディレクター 杢野 純子よりお届けします

TRAIL INC. 副代表
マネージングディレクター 杢野 純子
マーケティング全般及びITに精通。大手外資エンターテインメント系企業等でマーケティング統括室長として全社マーケティングを統括。複数の事業会社でのブランドマネージャー・マーケティングディレクターの経験を有し、グローバル展開を手掛ける。大手電機メーカーでは、成長戦略の中核を担い、新規事業を推進。情報・通信、IT、経営コンサルティングファーム、教育等幅広い業種に従事。東京工業大学未来社会デ ザイン機構構成員。東京工業大学 理学部情 報科学科卒。ワシントン大学MBA

■経営に対して、一番意識しているところは、エグゼキューション

 私が経営で最も大切にしている、あるいは楽しいと思うことはエグゼキューションかなと思っています。
経営には、常にいろんなマターはあるのですが、要するに会社を動かすことだと思っています。経営には戦略や組織、株主など、様々な要素があります。考えることは、たくさんあるし、考えなければだめ。でも考えているだけ、見ているだけではもっとダメ。結局、会社が動く、人が動くということが起こって初めて何か実現ができる。実際に事業をエグゼキューションする・される、それをどう自分がドライブするか、誰にドライブさせるのか、そういうことなのだと思います。自分も動き、会社も動くようにならないとだめです。これまでスタートアップの経験もありますが、その多くは、企業の中の新規ビジネスでした。これまでにないものを始めるということが多かったと思います。既存のビジネスがあり、そこに組織もあり、人もいました。つまり、ビフォーでいる人やビジネスと、これから作り出すアフターの人とビジネスは別物。今までと同じやり方をしていても始まらない。どうやって、実現するのかは新しく組み立てて実行する。そこがエグゼキューションという意識とつながっているのかもしれないです。

■既存のビジネスの人達のリソースを使いながら、新規事業側を上手く立ち上げていく

 既存組織の中で新規ビジネスを立ち上げる時に、多くの場合には(営業先や顧客を含め)既存のリソースを活用することが効率的であると考えられます。ただし、それには既存ビジネスからの協力が前提となる。ここが一番難しいわけです。皆、楽な仕事をしているわけではない。目標は決して簡単ではない中で、新しいビジネスに協力しろと言われて、余分な仕事ができる。それ自体は自分のビジネスに直接関係がない。もちろん、シナジーがある、クロスセルによる拡大が期待される、など理由はあるでしょう。会社全体としての意味合いは理解できる。ただし、それは、今の自分のビジネスもしくは自分自身にとってはメリットがない。既存の事業からすれば、新規事業は正直面倒なんです。しかし、そこをなんとか理解してもらい、手間をかけてもらうというところに毎回とても苦労しました。予算を投入し、しかも売上がそれほど大きくない。既存ビジネスからみれば、金食い虫でしかない状態から始まるので、事業の価値、意義を理解してもらえるようになるだけの実績を作るまでは苦しいですね。ただ、必ず協力してくれる人たちはいて、結果がついてくれば見えてくる景色は一気に変わります。

 また、スタートアップも経験しました。スタートアップはゼロからなので、自分の役割やタスクは事業に直結していてシンプルですが、既存企業での新規事業・新サービスは、事業そのものに加えて、周囲を巻き込む、あるいは切り離すなど、事業以外の要素も大きい。エグゼキューションのためには、社内変革的な要素が必要だと強く思います。また、新事業として、Eコマースとモバイルサービスを立ち上げたこともありますが、当然のことながら、それらは既存のビジネスを広げたり、強化したりすることです。
新しい事業が、既存のビジネスにどんな利益をもたらすのか、そのために、何を投下してもらいたいのかを示し、納得してもらわないといけない。
新規にクレジットカード事業を立ち上げた時は、アメリカでは既に事業になっていて、日本でも始めようということになったのですが、それこそ当初のビジネス規模は小規模です。しかし会社の戦略的な方針としては重要な位置づけです。だからといって、皆が協力してくれるかといったら、そうじゃない。最初は、誰にとっても他人事であり、何をしたら良いのかもわからない。エグゼキューションのために、自分、周りがどう動くのかをデザインし、働きかける。そして、動き出し、動き続けるように組み立てるということを繰り返すのが仕事だったと思います。

■新規事業から、事業の一部というカタチになったときに風景が変わる

 新規事業に対しての周りの目は、最初は、何ですかそれ?です。無関心。でも、ある時、急に変わるんです。新規ビジネスではなく、事業の一部になると風景が変わる。新規ビジネスはうまく立ち上がらなければ消え去っていく。当たり前の現実です。成功確率を高めるためには既存ビジネスからどれだけのサポートが得られるかは大きい。そして、そこにとても手間がかかるのが現実です。

新規ビジネスには新規ビジネスのチームがいます。既存側の人達はもちろん自分の仕事があります。新規ビジネスのエグゼキューションに直接かかわる部分はそれほどないし、あるべきでもない。けれど、その少しの部分が重要で、効果的に機能しない限り、結果として全体は回らない。実際に動いていく時には、自分が見ている範囲の人達だけが動けばいいというものじゃない。スタートアップは、規模的にお互いが何をしているのかがわかる。しかし、企業規模が大きくなれば、もともと全ての人が何をしているのか、なんてことはわからない。ましてや、新しいビジネスで誰が何をしているかなんて、全く意識しない。「あぁ、この人ってそんなことしてるんだ」と顔を覚えてもらい、興味を持ってもらう、ということから始めることが多いです。

■実際に動きだすまでには、ものすごく距離がある

 新規ビジネスは、命令系統や、業務プロセスが分断されていることが多く、チームだけでなく、皆に慣れないことを強いることになる。阿吽の呼吸など存在しない。時間と手間をかけなければいけない局面が多いと思います。実際に動きだすまでには、ものすごく距離があるということをずっと経験してきました。エグゼキューションさせるためのポイントは、メリットがあることですね。モチベーションを作る、という意味です。当たり前ですよね。メリットがない事は、どんなにいいことであってもやらないでしょ?日々の業務に追われる中、こちらの都合ばかりを伝えたところで、理解はすれども、動くことはないと思います。自身が反対の立場であれば、やはりそうでしょう。とてもシンプルです。これをやって欲しいのだけど、それがあなたにどんなメリットがあるのか。メリットを作れるかどうか。お客様にメリットがないものは売れない。売れなければ、その事業は立ち行かない。そういう意味で社外も社内も同じだと思いますが、何がメリットなのかが難しい。社内だと評価や目標が絡んでくることも難しいですね。

新規ビジネスの優先順位と、既存ビジネスの優先順位はそもそもが異なる。加えて、実際の仕事における優先順位は各人が決めていく。そこに目標設定や評価がつながる。日々の仕事は個々の優先順位に従って進んでいく。今までにない行動を、今の優先順位の中でどう組み込んでもらえるのか。まずは、それが第一歩ということでしょうか。

 

プロジェクト・経営人材の
ご相談を承ります。